時間・星・結晶・華——
この世界は、四つの言葉からできている。
この世界のすべては、「時間」で動いている。
すべての生き物は、体内の魔核に時間エネルギーを宿している。それは寿命であり、魔法の残量であり、通貨でもある——三つを兼ねた、命そのもの。残りがゼロになったとき、その者は死を迎える。
時間は日々の暮らしとともに静かに減っていく。時の経過、怪我、病、空腹、そして魔法の行使。取り戻す方法もある——食事をとること、働いて対価を得ること、魔物を討伐すること。
1Ø=寿命1時間分。賃金は時間で支払われ、大きな取引にはアーティファクトの「時元コイン」が使われる。時間は富であり、権力の象徴でもある。
15歳になると約12年分の残り時間が魔核に満ち、自然減少が始まる。それがこの世界の「成人」。成人を祝う成星式を経て、労働も、旅も、結婚も許される。式はかならず星曜日に行われ、その日は町じゅうが祭りになる。
一週間は聖曜日(せいようび)・焔曜日(かようび)・氷曜日(れいようび)・雷曜日(らいようび)・時曜日(ときかけび)・星曜日(ほしかけび)の六日。「時曜日は己のために、星曜日は神のために休む」とされ、聖曜日~雷曜日によく働く人が多い。
残り時間の減りが徐々に遅くなり、やがて完全に止まってしまう不治の病。時間は残っているのに、肉体だけが朽ちていく——その治療法は、いまだ見つかっていない。
人々にとって、星は神そのものである。
創世神話は語る。はじめに7つの属性、聖・炎・氷・雷・風・水・土が生まれ、次に「時間」が生まれたことで、ヒトと獣が誕生したと言われている。時間ができたからこそ、すべての生物は存在できた——それがこの世界の信仰の根にある。
暦は星暦。1年は12ヶ月、1週間は6日。「12」は最も神聖な数字とされ、暮らしのあらゆる場面に刻まれている。物語の始まりは星暦1211年。
12年ごとに開かれる世界規模の祭り。前夜祭が1週間、年が明けてからも1週間お祭りが続く。「12」が重なる星暦1212年の星導祭は、史上最大の規模になると噂されている。
すべての生き物は、宿す魔核の種類によって12星座に対応する「門」に分類される。魔物も、家畜も、ヒトも——みな十二の星のいずれかに属している。
命の器は、結晶のかたちをしている。
手首の近くに露出した魔核。その輝きで、おおまかな残り時間がわかる。大きな魔法を続けて使えば、輝きは段々くすんでいく。食事や薬、アーティファクトで時間を取り戻せば、青白さは戻ってくる。回復魔法という概念は、この時間エネルギーの流れに逆らうため、この世には存在しない。
| 輝き | 残り時間 |
|---|---|
| 青白く輝く | まだ余裕がある |
| 黄色に灯る | 残り数年ほど |
| 赤く濁る | 死が近い |
全生物が持つ、時間エネルギーの集まる結晶状の器官。肉体が果てても残り続けるが、砕かれれば絶命する。神話にある通り、人間と魔物に根本的な違いはなく、門による波長の変化はあるものの、根本的な構造は変わらない。
生き物が死ぬと、肉体はゆっくりと結晶と化し、やがて土に還って植物を育てる。命は結晶を経て、次の命へと巡っていく。
「手首の内側を見せる」ことは、隠し事のない信頼の証。商談の前に袖をまくる者、腕輪で魔核を隠す貴族——結晶の位置は、そのまま文化になっている。
魔物の魔石を煮出し、薬草で整えて作る金色の薬。弱った人の時間をそっと支え、品質にもよるが、一瓶で三日ぶんほどの時間を回復するという。町の薬師が釜で煮出し、行商人が都へ運ぶ、庶民には手の届きにくい品。
この世界の花は、命の記憶である。
あらゆる病を治すと伝わる伝説の華。特殊な氷に覆われ、大精霊に守られているという。
強大な魔法を授ける華。守護者の出す試練を越えた者だけが、その一輪を手にできる。
千年分ともいわれる時間を宿す華。近づく者は、そのエネルギーに我が身を焼かれる。
人々に馴染みのある一般的な植物、サピエト草。その華は栄養に富み、傷を癒すポーション(時間回復効果は薄い)にも加工される。
強い生命力や意思を持つ者が死んだ跡は、花畑になることがある。結晶化した命が土に還り、花を咲かせる。
この世界では、花を渡す文化が浸透している。感謝のお返し、亡くなった人への手向け、ちょっとした感情表現。言葉より花——それがこの世界の作法なのかもしれない。
この世界で実をつける植物はリゴース・リンゴ・ペアー・プラムの四種だけ。中でもリゴースは希少な原種で、大きなエネルギーの場でしか実らず、実ると中に丸い種を十二粒持つ。リンゴは、それを人が栽培化したもので、さらにペアーとプラムに品種改良された。